肝臓ケア

アーティチョークは呑兵衛のための肝臓ケアハーブ

アーティチョーク
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アーティチョークとは?

名前アーティチョーク、Artichoke
和名チョウセンアザミ(朝鮮薊)
学名・読み方(野生種)Cynara scolymus [キナラ・スコリムス]
Cynara cardunculus [キナラ・カルドゥンクルス]
科名キク科
使用部位

アーティチョークは、「チョウセンアザミ」の和名で知られるメディカルハーブです。薬用のハーブティーとしてだけでなく、お料理にも使われています。

地中海沿岸原産で、その歴史は古く、紀元前にまで遡ります。現在のイタリアやシチリアで栽培されていたことが「植物学の祖」と呼ばれるテオフラストス(B.C.371-287)により記されています。

その後も「薬理学と薬草学の父」と言われ『マテリア・メディカ』の著者であるディオスコリデス(A.D.40-90年頃)、『博物誌』を著した大プリニウス(A.D.22/23-79)らが、アーティチョークの催淫効果(性欲あるいは性的機能を増進・亢進させること)や、男子の産み分け作用を記しています。

日本には、江戸中期に同属近縁植物のカルドンが、江戸末期にオランダからアーティチョークが入ってきたとされています。ちなみに和名に「チョウセン」とついていますが、朝鮮半島から渡来した植物というわけではなく、”海外から”来たアザミという意味合いでチョウセンが使われています。

肝臓ケアにおすすめ。アーティチョークの薬効

アーティチョークの薬用ハーブとしての歴史は古く、ギリシア・ローマ時代から特に「肝臓ケア」のために用いられてきていて、今では科学的にその効果が実証されています。

アーティチョークの効果効能

  • 強胆(肝臓の機能促進)
  • 利胆(胆汁の分泌を促進)
  • 消化機能亢進(消化機能を高める)

肝臓への作用「強胆」「利胆」とあり、また消化機能も高めてくれるので、まさにお酒好き、呑兵衛のためのメディカルハーブです。

日本病院薬剤師会のデータベースにも、以下のように記されています。

アーティチョークは,高コレステロール血症の治療,二日酔い,およびその胆汁分泌促進,抗酸化作用のために使用されています。

健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 第7版 (日本病院薬剤師会)https://www.jshp.or.jp/cont/22/0510-1.pdf P1

有効性に関しては、「有効性レベル③ 効くと断言できませんが,効能の可能性が科学的に示唆されています」または「有効性レベル④ 効かないかもしれません」です。メディカルハーブとして服用・摂取をする場合は、即効性に期待するのではなく、日頃の体調管理として使用することが大切です。

レベル説明
有効性レベル③・消化不良。アーティチョークの葉のエキスを摂取すると,消化不良の人の吐き気,嘔吐,鼓腸,胃痛などの症状が緩和されるようです。治療開始から2~8週間後に改善がみられるようです。
・高コレステロール血症。特定のアーティチョークエキスを摂取すると,治療開始から6~12週間後に,総コレステロールおよび低比重リポタンパク(LDL,悪玉)コレステロールや,LDL-コレステロールと高比重リポタンパク(HDL,善玉)コレステロールの比がわずかに低下するようです。アーティチョークに含まれる化学物質のシナリンを用いた研究では,相反する結果が示されています。凍らせたアーティチョークの果汁を摂取してもコレステロール値が低下することはなく,トリグリセリドという血中脂肪値が上昇するおそれがあります。
有効性レベル④・二日酔い。アーティチョークエキスを摂取しても,飲酒後の二日酔いを予防できないことを示すエビデンスがいくつか得られています。
科学的データが不十分・肝臓の胆汁量に影響を及ぼす疾患,過敏性腸症候群(IBS),水分貯留,ヘビ咬傷,腎臓の異常,貧血,関節炎,肝臓の異常,胆石予防,高血圧など。
健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データベース 第7版 (日本病院薬剤師会)https://www.jshp.or.jp/cont/22/0510-1.pdf P1

アーティチョークの薬効に関する研究

アーティチョークは、肝機能向上やコレステロール低減などに関する研究が行われています。

以下、要リライト

アーティチョークの薬効に関する研究は、1930年代に肝疾患や動脈硬化との関係などでなされて以降盛んになります。

1954年にPanizzi,L.らはアーティチョークからシナリン(cynarin)を分離しました。1966年にMaros,T.らは肝臓の再生効果を、1972年にGrogan,J.L.らはコレステロール低減作用を、1997年にGebhardt,R.らは抗酸化作用を、1999年にWegener,T.らは肝・胆道系疾患や消化器疾患に対する効果を、2001年にGebhardt,R.は抗胆汁鬱滞作用を、2004年にZhu,X.らは抗菌作用を、2011年にFantini,N.らは血糖値低下効果を報告しました。

アーティチョークの含有成分「シナリン」と「シナロピクリン」に注目

作用の中心となるのは、アーティチョークの含有成分「シナリン」と「シナロピクリン」と言われています。どちらも苦味がある成分です。

含有成分「シナリン」の作用とは?

アーティチョークに含まれる成分「シナリン」は、カフェ酸の誘導体。カフェ酸とは、コーヒーに含まれるポリフェノールの一種。リラックス効果やガンを予防する効果、動脈硬化を抑制する効果を持っているといわれている成分です。また誘導体とは、ある物質の化学構造を一部変化させることで生成される、元の物質に似た化学構造や性質を持つ物質で、シナリンはカフェ酸のような性質があります。

イタリアでは肝臓保護効果が注目され医薬品の成分として、ドイツでは消化器系強壮薬として使用されています。

主に以下2つの作用が報告されている成分です。

  • 肝臓の働きを強化し、胆汁の分泌を促す作用
  • 血中コレステロールや中性脂肪を減少させる作用

シナリンの肝機能強化は、アルコール摂取による肝臓のダメージ回復に期待できます。

また同時に、シナリンは胆汁の分泌を促します。

胆汁とは、肝臓でつくられる消化液で、脂溶性ビタミンやたんぱく質を小腸で吸収されやすい形に分解するなどさまざまな働きをしています。特に注目したいのが、肝臓の機能全体を活発にする作用のほか、過剰になっている血液中のコレステロールを減少させる胆汁の働きです。

シナリンはこの胆汁の分泌を増加させ、十二指腸への胆汁の排出を高めるとともに、コレステロールを低下させる作用や消化・吸収を助ける作用、血液中の脂肪代謝を活性化し中性脂肪を減少させる作用があります。

参考研究

生活習慣病予防効果:アーティチョークを含むカプセル飲用した結果、LDL、総コレステロールは、ベースラインよりも6-8%減少した研究

高脂血症予防効果:アーティチョーク抽出物を12週間飲用した結果、総コレステロールに改善した研究

また、シナリンには苦味があり甘味受容体を麻痺させる働きがあり、一時的に甘さを感じなくなります。シナリンを含むアーティチョークを食べた後、次にデザートを食べると、その甘さがより引き立つという現象が起こります。糖分の摂取を控えているが甘いものを食べたいという人にも、シナリンを含むアーティチョークはおすすめです。

含有成分「シナロピクリン」の作用とは?

大きく分けると、以下2つの作用があります。

  • 苦味質による利胆作用
  • NF-κBの転写活性阻害作用による、皮膚細胞の光老化抑制

アーティチョークに含まれる成分「シナロピクリン」は、キク科植物の二次代謝産物であるフィトケミカルで、植物が紫外線や外敵から身を守り繁殖するために生成する化学物質です。フィトケミカルは一般的に、抗酸化作用や抗がん作用などを持ちます。

シナロピクリンにもシナリン同様、苦味があり、この苦味には唾液や消化液を分泌させ、消化促進、強肝、利胆、緩下(排便)作用があります。シナロピクリンは、この苦味による利胆作用で、古代より肝臓の民間薬として使用されてきました。

専門誌でも以下のような内容が取り上げられています。

肝機能改善作用

シナロピクリンを含むアーティチョーク葉エキス(CCs)をラットに経口投与し,D一ガラクトサミン投与によるガラクトサミン誘発性肝炎ラットの血中GPTを有意に減少させ,肝機能改善作用を確認した(Fig.1)。

日本油化学会の学術誌「オレオサイエンス」第11巻 第5号(2011) 天然成分を利用した機能性活性成分の開発 https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/11/5/11_155/_pdf/-char/ja

CCsを,水浸ストレスを与えたラットに経口投与し,潰瘍の面積を測定した。CCsを与えたラットでは,胃内壁の炎症はほとんど確認されず,また潰瘍の面積も有意に減少させ,ストレス性胃炎抑制作用が確認できた(Fig.2)

日本油化学会の学術誌「オレオサイエンス」第11巻 第5号(2011) 天然成分を利用した機能性活性成分の開発 https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/11/5/11_15

また、シナロピクリンは美容業界、化粧品分野でも注目されています。皮膚のメラニンの産生や沈着が抑制されることによる美白効果が報告されているのです。

シナロピクリンには、リウマチなどの自己免疫疾患やアレルギー、がんなどの疾患に関わるとされる因子「NF-κB」の転写活性阻害作用があります。

Ⅰ型コラーゲンを分解するコラゲナーゼ「MMP-1(Matrix metalloproteinase-1:マトリックスメタロプロテアーゼ-1)」は、紫外線やストレスなどによって過剰に産生されることが報告されていますが、NF-κBが過剰に発現・活性化することによって、さらにMMP-1を過剰に産生することが明らかにされています。つまり、MMP-1の産生を促進するNF-κBの過剰な発現を抑制・阻害することが紫外線に当たる際の光老化抑制において重要であると考えられます。

実際に、ヒト美白試験(経口)やマウスでのメラニン生成抑制作用、光老化抑制作用が報告されています。

まだまだ身体にいいこといっぱい。アーティチョークの効果効能

カリウム

高血圧や骨粗鬆症予防にカリウム

カリウムは筋肉や神経の興奮伝達に関わる重要なミネラルです。

もっとも重要な作用は細胞内の浸透圧調節で、ナトリウムの排出を促し塩分の摂りすぎを防いでくれます。日本人の場合、高血圧の原因は塩分の摂りすぎがほとんどなので、カリウムの多い食品の摂取は重要と言えるでしょう。

さらにカリウムは尿中のカルシウム排出を抑制する作用があり、骨粗鬆症の予防として有効であることが研究で明らかになっています。

ビタミンC

ビタミンCは水溶性の成分で、抗酸化作用のある栄養素です。

酸化を防止する働きがあり、過酸化脂質の発生を防ぐことで動脈硬化やがんなどの病気を予防する効果が期待されています。

マグネシウム

筋肉の収縮や神経伝達に関わると言われており、イライラを鎮め、精神を安定させる作用があるとされています。

食物繊維

アーティチョークには食物繊維が8.7gも含まれています。特に含有量が顕著なのは水溶性食物繊維でコレステロールや糖質と共に体外に排出されるので、高脂血症や糖尿病の予防効果が期待されています。また、便秘予防に役立つといわれる不溶性食物繊維も含まれています。

アーティチョークの楽しみ方

ハーブティー

効果を求めるならば、約2g(ティースプーン山盛り1杯程度)に熱湯150mを注ぎ、蓋をして5〜10分間抽出したものを、1日3回服用することが推奨されています。

苦味が強いため、シングルティーで飲むには不向きとされており、ペパーミントと合わせてすっきりした味わいと胃腸ケアをプラスしたり、ルイボスと合わせて旨味と甘味をプラスしたりブレンドするのがおすすめです。

肝臓ケアに特化するなら、ミルクシスルやダンディライオンのルートとブレンドして相乗効果に期待するのもよいでしょう。

チンキ剤

珍機材とは、ハーブをエタノールまたは含水エタノールで浸けて成分を抽出する製剤のこと。ハーブの有用成分が脂溶性ならば高濃度のエタノール溶液で、水溶性であれば保存性を考慮して30~40%濃度のエタノール溶液で抽出します。
飲用する場合は、アルコール度数が30〜40度程度のホワイトリカーやウォッカを使用するのが一般的です。無水エタノール(エタノール99.5%以上)であれば、高エタノール濃度のチンキ剤を作れますが飲用はできません。

ハーブ重量に対して10~15倍容量のアルコールを入れて作ります。ハーブが完全にアルコールに浸っていることを確認して、直射日光の当たらないところで保存し、1日1回振り混ぜ、2週間程度で濾過して遮光タイプの保存容器に移して完成です。保存期間の目安は冷暗所に置いて約1年です。

チンキ剤の使用例

  • 飲用する場合は、数滴を好みの飲物に垂らして飲む
  • 精製水で10倍程度に薄めて化粧水やパックなどに使う
  • チンキ剤を数滴お風呂にいれて入浴剤として使う

アーティチョークの注意点

アーティチョークは副作用は知られていません。また、相互作用や安全性に関しては、メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版には未収載です。

ただし、キク科植物に対してアレルギーがある人には注意が必要です。また、胆道閉塞、胆石患者は医師の診断を受けてから使用することが推奨されています。

ABOUT ME
Ayako Katsuno
Ayako Katsuno
日本メディカルハーブ協会認定ハーバルセラピスト
科学的、体系的な知識に基づいて、メディカルハーブと精油の有用性を理解し、季節や体調の変化に応じた健やかでホリスティックなライフスタイルを提案できる専門家です。 思春期にホルモンバランスを崩し心身ともに不調な日々を過ごした過去の経験と、「これから先ずっと楽しく美味しくご飯とお酒を楽しみたい」という未来への思いから、メディカルハーブを研究しています。
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